温故知新Ⅱ

温故知新ってみなさんは、どのように理解されていました?僕は、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、ですので、もう1度過去の文献によって繰り返し読み解いていたら新しい知見が得られる、というふうに思っていました。しかし齋藤先生によれば、故(ふる)いことも知っていて、新しいことも知っている、これは先生となれるでしょう、でした。いやあ、まさしく温故知新、へぇーの連発です。

さて、40-50代の中年男女が急に一念発起してランニングやジョギングを始める。すると1カ月もたたないうちに膝の内側が痛くなってくる。整形外科受診すると変形です。ヒアルロン酸の注射と痛み止めで治療されますが、さっぱり治りません。はてさて?何ですかこれ、で来院される患者さんがたまにいらっしゃいます。こんな時は、僕は後医に当たるわけですから、とっても楽チン。圧痛が脛骨内顆にあれば、骨壊死の可能性があり、MRI検査により確定します。脛骨内顆の骨壊死の場合、注射しようが痛み止め飲もうが治りません。免荷です。たいていの場合、壊死部分の骨破壊は発生しません。ただし、同じ状況で80代の男女が来られた場合は骨破壊しますので要注意!僕とこでも、えげつなくO脚変形した患者がいらっしゃいます。まあ、80代の人に松葉杖つかせて免荷なんて、どだい無理な話ですね。入院すればいいのでしょうが、ものの2週間も経たないうちにオムツになります。そう、これも昔からよく言われた話で、レントゲンで正常であっても自分がおかしいと思うならば、免荷を指示しておけば大ケガは無いぞ、日下、とよく指導されたものです。今ではMRIが普及しておりますので確定診断に至るまでに短時間で済みますが、昔の先生方は野生の勘で判断されていたのかなあ。昔の文献を読むと、ほんとにおもしろいですね。

牽引もそう。最近は医学的根拠なしなんて言われていますが、やっぱり、僕も腰痛下肢痛のときに一番効くのは牽引だと思います。ちなみに牽引後では確実に椎間板腔は拡張します。しかも同日内なら結構その状態が持ちます。ただし2日と持ちません。たしか70年代の論文やったかなあ、読んですぐに自分の体で実験してみました。温故知新というか、読んでヘンから新鮮なだけですが。他にも、体操をしていて下腿内側を打撲、近医受診し筋損傷だからギプスを巻きましょうと2週巻かれたら、もう足関節が動かないという高校生がおりました。リハビリやっても全く治りません。文献検索したところ50年代やったか60年代やったか、英文で症例報告があるんです。堅い索状物を切除したら可動域が改善すると。この症例は大阪市立大で手術され、可動域が改善して競技復帰し、満足して高校で体操を引退したとのことでした。いやいや温故知新、ちゃうちゃう、読んでヘンだけやん。